■ノクターン・ツアー、そしてソロ・ミッションに寄せて

囚われのない音楽やムーブメントに出会うと自分はいつも言い様のない興奮と行動への欲求にかられます。強烈なオピニオンと同時に、変革を恐れない勇敢さと独自性を持っているものに強く惹かれてしまうのです。20歳で出会った"DECLINE"と"Another State Of Mind"のビデオ映像はその後の自分のバンド人生に於いて決定的なものでした。あの磁気フィルムの中の世界、ツアー用に自分達で改造したヴァンに乗り込み立ち寄った教会に寝泊りしながら何バンドかでツアーをするという姿にとても憧れたものです。自分が面白いと思うバンド達でタイトルの付いたドキュメント・ツアーをしたい。ノクターン・ツアーの基本的なソウル・ベースはまさにこんな所に在ります。

これまでの自分の音楽活動に於いて、国内外問わず経験してきたツアーやレコーディング過程の中で多くの友人とも出会い、ノウハウを学び、その瞬間一つ一つがとても有意義なものでした。趣向してきたバンド・アンサンブルの轟音が鳴り響く地下数メートルのフォーラムには自分を繋ぎ止める魅力が山積みで、良いバンド、音楽へのモチベーションがそこら中に溢れていました。紆余曲折、自分達のバンドが休憩を必要としだした数年前、これまで何となくスルーしてきた音楽や、SSW物の音源に混じって、録り貯めてあった膨大な量のデモ・テープを部屋で端から聴いていると、急に余剰な音量がマージンに聞こえ出した瞬間がありました。部屋内で揺れる弦の響きが当時の心象にピタリとハマリまり、自分がこれまであまり感じてこなかった心地よさを覚えたんですね。ずっと籍を置いてきたバンドと同列で語るものでは無い、また違った音楽観念がそこには在りました。これまでも曲を作る時はいつもアコースティック・ギターで作ってきたのだけど、こうしてベッド・サイドで出来た曲がシンプルな上に使う楽器も少ないけど、別に何も足りなく無い。音量に頼るダイナミズムと引き換えに最小限の音数でも表現として達成してる気がして、この日初めて自分のソロ・ミッションをイメージしました。そしてすぐにシンセサイザーを買い曲作りに没頭しました。今でもよく地方に行くとNahtの事を聞かれますが、Nahtは今年からまた活動を再開しています。そして今自分が行っているソロ・ミッションはNahtで表現してきた事とはまた違ったベクトル、よりプライベートなもので直接的なもの、バンドの代替をするものでは無いです。自分が作ったNahtの曲をソロ・ミッションで演奏する事はありますが、基本的には全てオリジナルな曲をプレイしています。好きな曲のカヴァーも織り込んだ自己巡礼的な要素も出したいと思ってます。

まだ漠然と構想を持ってた2004年の暮れ、Discharming Man始動のニュースとSakhalin TVの存在が「ミニマム・フォームによるノクターン」というフレーズに綺麗に繋がりました。あとは繋がったファクトを元に関係者のコンセンサスを得て一気に進み出し、このツアー・プランは現在に至ります。冒頭でも触れた基盤の考えに拠り、誰かが欠けた場合にはこの名前は使わずにいようと思います。ノクターンはこの3グループで周るプランで、各々が表現してる音楽性のバランスがあって成り立つものだと考えてます。あの時点で凄くクリアにイメージ出来きた事は必然だったのかもしれませんので。(快く協力してくれた関係者、レーベルには本当に感謝を)

2005年6月から始めたこのツアーもこれを書いている10月現在で既に7公演を終えました。拡声機材を余り要さないこのツアーでは出音の制限されたスペースで演奏出来る事もあり、北海道小樽では運河倉庫を改造したカフェ&ギャラリー、Mikumari(ぶら下った裸電球が情緒と風情のある良い所)、旭川では石蔵を利用したスタジオ・スペース、電気猫で演奏してきました。また名古屋で行ったKDハポンのアンビエントな雰囲気もとても気に入ってます。凛とした雰囲気がとても心地良くチル・アウトした瞬間でした。

スペースを選ばすに自由度高く、尋ねた先々に一句読んで置いてくる様なニュアンスで、そして出来るだけ小さく細かく全国行脚していけたらと思ってます。またゲスト出演してくれた(る)バンド、動いてくれている方々に心より感謝を。囚われの無い音楽表現の一環としてノクターン・ツアーが、そして国内のみならずアジア、世界へと軌跡を紡いでいけたらと思っています。

SEIKI (2005年10月某日)

 


 

自分はノクターンツアーに参加させてもらってから、かれこれ5ヵ月程経ちましたが、再認識したことが1つだけあります。それは大多数の人が、まだまだ凝り固まった価値観で音楽と接しているんだなということです。それはヤル側もミル側も。だからその価値観を、少〜しずつ破壊しに行くツアーだとオレは勝手に解釈しています。ものをつくる前に手段や形態が先に出てしまってはいけないと思うんです。それは当たり前でとても難しいこと。だけどセイキさんもトジマさんも、あえてそこに挑んでいます。なんて身の程知らずなのでしょうか(笑)。まぁオレもなんですけど。。でも本当に音楽は自由だと思うし、自由じゃなきゃいけないと思う。その想いみたいのものが少しでも伝われば、このツアーの意味があると思っています。

これまでツアーの経験の無かった自分にとって、もの凄く新鮮で刺激的なノクターン・ツアー。シンパシーを感じ、尊敬できる人達と共に各地を訪れ、その土地の空気を肌で感じ、音を通じて様々な人々と出会い、そしてふれあうことはこの上なく喜ばしいことです。 今年3月にSEIKIさんからこのツアーの構想の話をいただいた時、非常にワクワクしたことを覚えています。ある時は空を飛び、ある時は陸地を走り7カ所をまわり終えて、新たなる可能性を感じ始めています。バンドでしかできないことがあるように、ミニマム編成でしかできないことがあるのです。大切なことは形態ではなく、演奏する側の意志と情熱だということ。これからもノクターン・ツアーは着実に一歩一歩力強く進んで行きます。より多くの人々の心に風景のごとく刻まれることを願って。